公正証書遺言

こんにちは。行政書士の城野です。

本日は公正証書遺言の作成について研修を受けましたのでそちらの内容を書きたいと思います。

遺言が書かれている割合

日本では高齢化社会という時代に入ってから遺言という言葉やエンディングノートといった言葉をよく聞くようになりました。私が今まで働きました士業界隈や不動産業界でも相続周辺業務がキーワードになっていましたので自然と遺言という言葉をよく耳にしていました。

日本では少し古いデータですが2019年度の死亡数138万人に対して、同年度の公正証書遺言作成件数約11万件、自筆証書遺言約2万件の合計13万件の遺言書が確認されています。死亡者数:遺言確認件数=10:1。約10%です。ですがイギリスでは約50%ほどこの割合があるとのことですので、まだまだ日本は追いついていないと言えるのではないでしょうか。

遺言の必要性が高いケース

  1. 夫婦の間に子がいない
  2. 再婚し、先妻の子と後妻がいる場合⇒紛争が起こる可能性が高いです。
  3. 特定の者に事業を承継させたいとき⇒中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律をチェック
  4. 相続人不在⇒遺言が無いとそのまま国庫に帰属することになります。
  5. 相続人ではない第三者に遺贈するとき
  6. 相続人に財産を相続させたくないとき⇒相続人の廃除は要件が厳しいです。それよりも相続財産の一切について、相続又は遺贈を受ける者を指定する方が遺言の効力は発揮しやすいです。当然、財産を受けていない相続人が納得していない場合、紛争の可能性が高いです。

公正証書で遺言を作るメリット・デメリット

公正証書遺言が何たるかはHPで確認いただけますので今回は割愛いたします。

まずは公正証書遺言のメリット(自筆証書遺言と比べて)をお伝えします。

公正証書のメリット

  1. 内容の正確性、遺言要件の不備がないことを公証人がチェックしてくれる
  2. 遺産分割手続きは要しないとする条項かどうかを確認して、記載する(共有持ち分なのか、分割なのか)
  3. 検認不要↔自筆証書遺言は検認が必要(遺言書保管法の下で保管した場合も検認は不要)(検認には3~4か月かかることも!)
  4. 意思能力を確認してくれる⇒無効になった事例がないので安心
  5. 原本の安全確実な保管(廃棄した例はない 50年近く保管する(半永久的))
  6. 秘密保持ができる⇒相続人が証明できれば相続が開始された際に見ることができる
  7. 自筆証書は手続き要件が厳しく、無効となる恐れがある。

◆公正証書遺言のデメリット

  1. 作成すると手数料がかかる 手数料の目安は相続財産1億円、相続人2~3人で手数料7~8万円かかります。10年保管するとして年間7千円程度で有効性の検査と安全な保管ができると思うと高い費用ではないと思います。
  2. 手続きが手間(公証人に出向くことが手間、負担がかかる)

※遺言の一部訂正・取り消し・全部撤回について

遺言を一部訂正・取り消しをしたい場合があるかと思いますが、全部撤回をお勧めします。 一部訂正・取り消しの場合は、どこがどう違うかがわかりにくくなるためです。一部訂正の場合でも、全部撤回の場合でも公正証書遺言作成費用はそこまで変わらないようです。(大体5万円程度。最初に作成した公証役場で相談された方がよいです。)

公正証書遺言を作成の流れ

  1. 資料の確認 本人確認資料:写真付きの本人確認書類(運転免許証など)⇒そろえることが難しければ公証人に要相談
  2. 財産の一覧表と財産分けの素案作成⇒表を作成する ※遺言に記載のない財産についてはどうするかを書いておく事と相続財産の分け方についての考え方を聞いておくことが大切
  3. 財産の一覧表の価格及びエビデンスをそろえる(登記事項全部証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳、株式、相続人確認のための戸籍関係資料、相続関係図)
  4. 遺言書のデータ保管と検索・取り寄せ⇒平成元年以降に作成された遺言であれば、公証役場に登録されている(遺言者の名前がひらがなで登録されているため、正確なよみがなが大切)
  5. 遺言を作成する場所の決定⇒公証人役場が一般的だが公証人に来てもらうこともある(公証人に要相談)
  6. 意思能力とその関係の手続きについて説明(後述)

(後述) 意思能力とその関係の手続きについて説明

遺言は15歳以上で能力を有する者遺言可能となっています。遺言の作成年齢は大体60歳代後半から80歳代が多いようです。

公証役場では自己紹介と挨拶を兼ねて、お名前や生年月日、年齢、交通手段を尋ねられて公正証書遺言作成当日の目的、遺言をする財産、分け方の概要等の説明を求められます。そこで遺言者が発語できない、認知症等を疑われる場合、病気で署名できない場合等がありその場合の対応例を記載します。

  1. 発語できない⇒遺言は可能。五十音ボードを使って、指あるいは目で指示をし、それを通訳人に通訳して貰って、閲覧し、最後に公証人が本人の代わりに署名押印して作成した例もあります。
  2. 認知症等が疑われる場合⇒意思能力の有無が重要になってきますが判断が難しい場合もあります。誰にでもわかる簡単なものならば認められた裁判例もあります。認知症等により遺言者の意思能力に不安があれば、公証人には、必ず事前に情報として提供し、問題点を共有しておきます。
  3. 成年被後見人、被保佐人、被補助人⇒遺言はできます。民法第973条により、成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時に遺言をすることができ、その場合は、医師二人以上の立会い及びその医師において、遺言者が遺言をする時に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して署名押印して作成することになります。ですが非常にまれなケースのようです。
  4. 筆記及び読み聞かせ⇒可能ですが、返事だけでは口授と認められないという裁判例(最判昭和 51.1.16 集民 117・1)があります。
  5. 署名できない場合⇒公証人が代わって署名押印するので可能です。この点も公正証書の記載内容が異なってきますので、あらかじめ公証人と打ち合わせておきます。