成年後見制度

おはようございます。行政書士の城野です。

今日は成年後見制度について研修を受けたのでその内容を備忘のため記録しておきたいと思います。

成年後見制度の概要

成年後見制度とは精神上の障害により判断能力に欠ける、あるいは不十分な人を保護・支援するため援助者を選任して、契約の締結等を代わって行ったり本人が誤った判断に基づいてした行為を取り消したりして、本人を法律的に保護する制度です。

成年後見制度が求められる背景

(1)高齢社会への対応

日本では急速に高齢化が進んでいることや人口の都市集中化が進んでいることから核家族化、高齢者のみの世帯・高齢者の独居が増えており社会問題となっております。年齢が高まるにつれて認知症の有病率も上昇することがわかっています。今後も高齢社会が進行することで判断能力が低下する方の数が増えることが想定され、認知症高齢者の介護の課題解決が必要となっております。

高齢化の推移(画像引用 内閣府HP

日本は2017年時点ですでに人口の約30%が65歳以上となっており、超高齢社会となっております。

年齢別認知症有病率(東京都健康長寿医療センター研究所HP

そういった背景の中、2000年4月から介護保険制度の導入が決定されました。

それ以前も介護保険制度はありました。

それは介護サービスを行政が一方的に決めてしまう「措置制度」と言われるものでしたが、この介護保険制度導入により利用者が自分で介護サービスを選んで決める「契約」が必要な制度へと変わりました。

そのため本人が契約することが必要ですが、判断能力が低下した利用希望者本人ではこれらの手続きができない場合も考えられます。

そのような人々がこれらの行為をするために法的な支援の仕組みとして成年後見制度が制定されました。

つまり介護保険制度と成年後見制度の導入はセットであったわけです。

(2)諸外国における成年後見制度の動向

日本は先進国の中でも高齢化率が高く世界でも注目を集めていますが、成年後見制度の採用は遅かったと言われています。

例えばフランスでは1968年に法律を改正し、従来の禁治産、純金持参の制度を「後見」「補佐」「裁判所の保護」に改めました。

カナダのケベック州では1990年に「後見」「補佐」「補助」の制度に改めています。

ドイツでは1992年に「成年者世話法」が施行され、旧来の行為能力剥奪・制限の宣告、成年者を対象とする後見および障害保護の各制度を全面的に廃止しています。

このように国際的な社会福祉理念や制度の変化に追随する形で日本も2000年に成年後見制度が始まりました。

成年後見制度の構成

成年後見制度には法定後見と任意後見の2種類があり、法定後見には本人の判断能力によって保護者の権利に違いがあり、本人の判断能力が低い順に後見、補佐、補助という形が準備されています。

判断能力と後見制度のイメージ

成年後見制度の具体的な内容については今後ブログで記事を書きたいと思います。

成年後見制度利用状況

2000年に成年後見制度が始まり20年以上が経っておりますがまだ利用が進んでいるとは言えない状況です。

2020年の成年後見申し立てに関する最高裁判所の統計によれば総申立件数37,235件となっております。

少しずつ利用が増えているようですが、推定される認知症高齢者が500万人程度いらっしゃるということなのでまだまだ少ないと言えると思います。

(画像引用 成年後見事件の概要 裁判所HP

需要が高いにもかかわらず利用が進まない中、内閣府は成年後見制度の利用促進のため2016年に成年後見制度の利用の促進に関する法律を制定しました。この法律は国、地方自治体、その他の公共団体また国民に対し、成年後見制度利用促進に関する施策を行うべきと規定されています。

2018年には各市町村が策定する成年後見制度利用促進計画の作成手引きとして「地域における成年後見制度利用促進に向けた体制整備のための手引き」が発刊されました。

現在各市町村では利用促進体制の整備を進めているところかと考えられます。

先日私が訪問した地域包括支援センターでも、後見制度利用促進の啓発活動を行っているということで仰ってありました。

後見制度については制度の内容がきちんと利用希望者に伝わっていない印象があります。啓発活動を含めきちんと情報提供をし利用希望者が利用しやすいように協力していければと思います。