
こんにちは!企業の健全な成長を法務・総務面からサポートする行政書士の城野です。
日々の業務に追われる中で、
「経理担当者が急に辞めたら、業務が回らなくなってしまう…」
「従業員も増えてきたけど、社内のルールが曖昧で不安だ」
「気づかないうちに、会社の資産が適切に管理されていないかもしれない…」
このような漠然とした不安を抱えている中小企業の経営者様は、実は少なくありません。
会社の成長と共に、こうした「守り」の部分、すなわち内部統制の重要性は増していきます。内部統制は、大企業だけのものではありません。むしろ、限られた人材で会社を運営する中小企業にこそ、不正を未然に防ぎ、業務を効率化させるために不可欠な仕組みなのです。
そもそも「内部統制」って何?
難しく考える必要はありません。内部統制とは、一言でいえば**「会社を健全に、そして効率的に運営するための社内ルールや仕組み」**のことです。
この仕組みがしっかりしていると、次のようなメリットがあります。
- 不正やミスの防止: 担当者間のチェック機能が働き、不正やミスが起こりにくい環境を作ります。
- 業務の効率化と標準化: 誰がやっても同じ品質で業務が進むようになり、属人化を防ぎます。
- 社会的信用の向上: 金融機関からの融資や、大手企業との取引において、信頼性が高まります。
まずは自社の現状を把握してみましょう!
「何から手をつければ良いかわからない」という経営者様のために、今回、バックオフィス業務に特化した**「内部統制評価チェックリスト」**を作成いたしました。
経理・財務から人事・労務、情報システム管理まで、バックオフィスの主要な業務領域を網羅しています。まずはこのチェックリストを使って、自社の「守りの強さ」をセルフチェックしてみましょう。
▼バックオフィス内部統制評価チェックリスト▼
I. 全般(組織全体に関わる項目)
チェック項目 | はい | いいえ | 備考 |
1. 統制環境 | |||
1-1. 経営者は、誠実性および倫理観の重要性を全社に示しているか。 | |||
1-2. 職務分掌規程が整備され、各従業員の責任と権限が明確になっているか。 | |||
1-3. 内部監査機能(またはそれに準ずる機能)は整備され、独立性を保ち機能しているか。 | |||
1-4. 従業員の能力開発や研修の機会が提供され、適切な人材が配置されているか。 | |||
2. リスクの評価と対応 | |||
2-1. 全社的なリスクを定期的に識別・分析・評価するプロセスは存在するか。 | |||
2-2. 評価されたリスクに対して、適切な対応策(低減、移転、受容など)が講じられているか。 | |||
3. 情報と伝達 | |||
3-1. 業務に必要な情報が、組織内外の関係者に正確かつ適時に伝達される仕組みがあるか。 | |||
3-2. 内部通報制度が整備・周知され、実効的に機能しているか。 | |||
4. モニタリング(監視活動) | |||
4-1. 内部統制の有効性を継続的に評価するプロセスがあるか。 | |||
4-2. 内部統制上の不備が発見された場合、速やかに是正措置が講じられているか。 |
II. 経理・財務
チェック項目 | はい | いいえ | 備考 |
1. 現金・預金管理 | |||
1-1. 現金の出納担当者と記帳担当者は分離されているか。 | |||
1-2. 現金実査は、出納担当者以外の者により、抜き打ちまたは定期的に実施されているか。 | |||
1-3. 銀行口座の残高証明書と帳簿残高の照合は、経理担当者とは別の者によって定期的に行われているか。 | |||
1-4. インターネットバンキングのID・パスワード管理、承認権限の設定は適切か。 | |||
2. 売上・売掛金管理 | |||
2-1. 受注、出荷、請求、入金確認の各プロセスで担当者が分離されているか。 | |||
2-2. 請求書の発行漏れや二重発行を防ぐための管理(連番管理など)が行われているか。 | |||
2-3. 売掛金の残高確認や年齢調べが定期的に行われ、滞留債権に対する適切な措置が講じられているか。 | |||
3. 仕入・買掛金管理 | |||
3-1. 発注、検収、請求書照合、支払承認の各プロセスで担当者が分離されているか。 | |||
3-2. 承認された発注書や検収報告書に基づかずに支払いが行われない仕組みになっているか。 | |||
3-3. 請求書と納品書の照合が確実に行われ、支払内容の妥当性が検証されているか。 | |||
4. 決算・財務報告 | |||
4-1. 決算手続や会計処理の基準を定めた経理規程は整備され、遵守されているか。 | |||
4-2. 仕訳や伝票は、権限のある者によって承認された後に入力されているか。 | |||
4-3. 勘定科目の残高明細が作成され、上位者によるレビューが行われているか。 |
III. 人事・労務
チェック項目 | はい | いいえ | 備考 |
1. 採用・退職 | |||
1-1. 採用・退職に関する手続きは規程化され、適切に運用されているか。 | |||
1-2. 人事マスターデータへの登録・変更・削除は、権限のある者のみが実施できるか。 | |||
2. 勤怠・給与 | |||
2-1. 勤怠データは客観的な記録に基づき、上長によって承認されているか。 | |||
2-2. 給与計算担当者と、給与データの承認者・振込担当者は分離されているか。 | |||
2-3. 給与マスターの変更は、承認された人事異動通知書等に基づいて行われているか。 | |||
3. 労務管理 | |||
3-1. 労働時間、休日、休暇の管理は労働基準法に準拠して適切に行われているか。 | |||
3-2. 社会保険・労働保険の手続きは、法令に基づき遅滞なく行われているか。 |
IV. 購買
チェック項目 | はい | いいえ | 備考 |
1. 発注担当者と検収担当者は分離されているか。 | |||
2. 新規取引先の選定にあたり、与信調査や反社チェックなどの手続きが定められているか。 | |||
3. 一定金額以上の取引については、相見積もりの取得が義務付けられているか。 | |||
4. 納品された物品・サービスは、発注内容と一致しているか検収担当者によって確認されているか。 |
V. 法務・コンプライアンス
チェック項目 | はい | いいえ | 備考 |
1. 契約書の作成・審査・締結に関する規程があり、法務部門等のレビューを経ているか。 | |||
2. 締結済みの契約書は、管理台帳で一元管理され、原本は施錠可能な場所で保管されているか。 | |||
3. 事業運営に関連する許認可は適切に取得・管理・更新されているか。 | |||
4. コンプライアンスに関する研修が、全従業員に対して定期的に実施されているか。 |
VI. 情報システム
チェック項目 | はい | いいえ | 備考 |
1. システムへのアクセス権限は、職務分掌に基づき、必要最小限の原則で付与されているか。 | |||
2. 権限の付与・変更・削除は、申請と承認のプロセスを経て行われているか。 | |||
3. IDとパスワードの管理に関するルールは定められているか。 | |||
4. 重要なデータは定期的にバックアップが取得され、復旧テストが行われているか。 | |||
5. コンピュータウイルス対策やソフトウェアの脆弱性対応は適切に行われているか。 |
VII. 総務
チェック項目 | はい | いいえ | 備考 |
1. 固定資産台帳は整備され、資産の取得、移動、除却が正確に記録されているか。 | |||
2. 固定資産の定期的な実査が行われ、台帳との照合が行われているか。 | |||
3. 文書管理規程が整備され、文書の作成、保管、廃棄が適切に行われているか。 | |||
4. 印章(会社実印、銀行印など)の管理・使用に関する規程があり、適切に運用されているか。 |
チェックリストの使い方と活用のポイント
使い方はとても簡単です。
- 現状を正直に評価する: 各項目について「はい」「いいえ」で答えてみてください。完璧である必要はありません。まずはありのままの状況を把握することが大切です。
- 「いいえ」の項目に注目する: 「いいえ」と答えた項目は、貴社の潜在的なリスクや課題です。なぜ「いいえ」なのか、少し考えてみましょう。
- 改善のヒントを見つける: 「いいえ」の項目は、そのまま改善すべきポイントになります。例えば、「現金実査を行っていない」のであれば、「月1回、経理担当者以外が実施する」という具体的なルール作りのきっかけになります。
「いいえ」の数が多くても、落ち込む必要は全くありません。むしろ、これまで見えていなかった会社の伸びしろを発見できたと考えてください。課題が明確になれば、あとは一つずつ対策を講じていくだけです。
専門家と一緒に、より強い会社組織へ
このチェックリストは、あくまで貴社の現状を把握するための「健康診断」のようなものです。診断結果をもとに、より具体的な改善策、例えば、
- 自社に合った各種規程(経理規程、購買規程など)の作成
- 担当者間の牽制が効く業務フローの見直し
- 契約書の適切な管理方法の構築
などが必要な場合は、ぜひ私たち専門家にご相談ください。
当事務所では、今回のチェックリストの結果をお持ちいただければ、貴社の状況に合わせた、より具体的な改善策をご提案させていただきます。一緒に、変化に強く、持続的に成長できる会社組織の土台を築いていきましょう。
まずはお気軽に、自社の「健康診断」から始めてみてください。