合同会社

こんにちは。行政書士の城野です。

本日は法人の種類の一つであります合同会社について書きたいと思います。

合同会社とは

そもそも合同会社とはどのような会社でしょうか。一般的に以下のような特色があります。

  • 合同会社は出資者である社員が集まって運営する組合的な会社
  • 社員は原則として業務執行社員(会社法590条1項)となり代表社員となります(会社法599条1項)。
  • 会社内部の事項について定款自治が大幅に認められている
  • 設立費用が株式会社に比べると安い(定款の認証が不要)
  • 維持費用が株式会社に比べて安い(決算公告が不要)

日本では株式会社に比べると知名度が低いのですが、アメリカでは税制の影響もあるようで株式会社と同じくらい普及しているそうです。しかし最近では年々、法人設立の際の選択肢として合同会社の比率も高まっております。

(参考 e-stat

知名度が低いと書きましたが実は有名な会社でも合同会社を選択している事例もたくさんあります。

  • アップルジャパン合同会社
  • アマゾンジャパン合同会社
  • 合同会社西友
  • ユニバーサルミュージック合同会社
  • P&Gプレステージ合同会社(旧P&Gマックスファクター)

皆様もご存じの会社もあったのではないでしょうか。

また私は以前収益物件販売の不動産会社におりましたが、法人を設立されて購入される方の多くは合同会社を設立されていました。法人設立の費用が安いことが合同会社を選択された主な理由でした。

合同会社の定款

合同会社は設立の費用や維持費用も安いため、日本において知名度を気にしないような会社であれば、法人設立のよい選択肢になりうると思います。運営に関しても定款自治が広く認められているため、運営もスムーズに進められます。しかしこの定款自治が広く認められているがゆえに、運営者はきちんと意図して運営する必要があります。あとで意図しない形にならないように特に法人設立時の定款の作成については注意が必要です。

法務局のHPには定款のモデルがあります。しかしこれは基礎的な場合を書いてあるだけであり記載例にも「一例です。会社の実情に合わせて作成してください」と文言があります。

実は合同会社の定款作成には約30の定款の相対的記載事項があり、それを活用して将来生起する可能性のある、様々な場合に対応できる定款を作成することが必要となります。

相対的記載事項

相対的記載事項とは定款に定めなければその効力を生じないと規定されている事項で会社法の基本ルールとは異なり、会社の意図を反映させられる場所になります。上述のように合同会社の定款の相対的記載事項には約30ありますが一部抜粋すると次のような事項があります。

(持分の譲渡)

第585条

  1. 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
  2. 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
  3. 第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
  4. 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。

(業務を執行する社員を定款で定めた場合)

第591条

  1. 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。この場合における前条第三項の規定の適用については、同項中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」とする。
  2. 前項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
  3. 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、その効力を失う。
  4. 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
  5. 前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。
  6. 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。

(相続及び合併の場合の特則)

第608条

  1. 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
  2. 第六百四条第二項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
  3. 第一項の定款の定めがある場合には、持分会社は、同項の一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす。
  4. 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものであって、出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、連帯して当該出資に係る払込み又は給付の履行をする責任を負う。
  5. 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者一人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

3条だけ会社法から抜粋しました。特に608条については要注意です。1項において「その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。 」とありますのでその定めがない場合には相続人その他の一般承継人は社員になることができずに、社員1人の合同会社は解散することになります。

まとめ

合同会社は設立しやすく、定款自治が幅広く認められており自由度が高いと言えます。その分きちんと理解したうえで設立運営すべき法人とも言えます。上述したのは3条しかありませんが、このほかにも利益の配当や損益分配の配当などお金に絡むところできちんと取り決めておいた方がよいと思われるところが多数ありますので合同会社を設立される際は専門家へのご相談をお勧めします。

以上です。法人設立を検討されている方の参考になれば幸いです。