公正証書遺言

おはようございます。行政書士の城野です。

本日は自筆証書遺言についての争いの事例を見ていきます。

今回、事例を書いていて思いましたが、より安全に遺言を残すためにも公正証書遺言をお勧めしたいと考えます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言の要件に遺言の全文、日付を自書し署名押印することが挙げられます。

この自筆証書遺言については有効無効を争っている事例がいくつもあります。

以下争いの事例をいくつか挙げてみます。

自書について

自書とは自分で書くことであるのでパソコン等で作成することはできません。

遺言の有効無効を考えるときに、自書の要件を満たすかどうかがポイントになっています。

それに関する争いをいくつか事例を記載します。(以下裁判所HPより)

①カーボン複写を用いた遺言(最判平5・10・19

カーボン複写の方法によって記載された自筆の遺言は自書の要件に欠けるものではないとして有効

②運筆に他人の助けを借りることで作成した遺言(最判昭62・10・8

遺言者が証書作成時に自書能力を有し、かつ、右補助が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされていて単に筆記を容易にするための支えを借りたにとどまるなど添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることできる場合は自書の要件を満たす

日付について

日付も自書が必要です。また明確な日にちを残すことが求められています。

日付印では自書と認められません。

①吉日という書き方(最判昭54・5・31

自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書は、民法九六八条一項にいう日付の記載を欠くものとして無効。

②日付の誤記(最判昭52・11・21

 自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、遺言はこれによつて無効となるものではない。

押印について

押印についても争いがあります。

押印については実印である必要はないのですが、争いの可能性を少なくするためにも実印を用いるのが望ましいと考えられます。

①押印の場所(最判平6・6・24

遺言者が、自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため、遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが、遺言書であることを意識して、これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなど原判示の事実関係の下においては、右押印により、自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはない。

②指印(最判平元・2・16

 自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

以上の事例は新日本法規出版「遺言書作成 遺言執行 マニュアル」という本を参考に事例を抜粋しました。

自筆証書遺言の要件である自筆や署名押印についてすぐに争いの事例が見つかります。

やはり確実に遺言を執行するためにも、改めて公正証書遺言をお勧めしたいと思います。