成年後見制度_任意後見

おはようございます。行政書士の城野です。

本日も引き続き成年後見制度の研修備忘記録を残したいと思います。

本日の内容は任意後見についてです。

任意後見とは

任意後見は本人が判断能力がある間に、将来判断能力が不十分になったときに備えておくものです。

具体的には、将来判断能力が不十分になったときに本人の希望する人(任意後見人)に代理権を与えるという制度です。

任意後見制度を利用するには「任意後見契約」を本人と任意後見人との間で締結する必要があります。

任意後見が効力を発揮するには以下のような条件があります。

  1. 任意後見契約は公正証書によって締結される必要があります。
  2. 家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから契約の効力が生じます。
  3. 任意後見契約がされた旨の登記が必要です。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。 任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。

(任意後見契約の方式)

第三条 任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。

(任意後見監督人の選任)

第四条 任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。

任意後見契約に関する法律

任意後見契約の利用パターン

任意後見には3つの利用パターンがあります。

それぞれ特徴がありますので自身にあったものに合わせて契約することが必要です。

①将来型

現在は元気だが、将来判断能力が低下したときに支援してほしいと考える場合に検討します。

ご本人が元気なうちは、財産管理等の事務は行いません。

この間は見守り契約のみで定期的な連絡を行うことがあります。

②移行型

現在は元気で判断能力は低下していないが、心配なので契約時から支援してほしいと考える場合に検討します。

早い段階から財産管理等を任せたい場合の契約形態です。

身寄りがない方の利用が多いようです。

注意点としては元気なうちから財産管理をお任せしますので、任意後見が必要となった場合でも後見を発効させる手続きの必要性を感じずにそのまま進めてしまう可能性があります。後見開始前は裁判所が関係していないので、後見人の事務を管理する機関がありません。判断能力の低下をよく見て任意後見が発効されることが必要です。

③即効型

すでに判断能力が若干低下している場合にすぐに任意後見を発効したい場合に検討します。

注意点は契約時点で契約ができる判断能力を有しているかどうかが問題となります。

すでに判断能力が不十分であれば法定後見を検討すべきだと考えられます。

任意後見契約締結までの流れ

ここでは任意後見契約の締結までの流れを見ていきます。

①契約内容のたたき

任意後見契約希望者(以下依頼者)と任意後見契約受任予定者(以下受任者)との間で「何をしたいか、何をしてもらいたいか」をまとめる。

②依頼者と受任者の面談

受任者は依頼者の契約行為が可能かどうかを確認する。

③任意後見人の決定

④任意後見契約と代理権目録の内容の決定

①のたたきを参考に契約内容を固める。その際任意後見契約の他生前事務委任契約、死後事務委任契約の作成が必要かどうかも併せて検討する。確定したら契約の原案を作成する。(事前に公証人に原案を確認してもらう。)

⑤公正証書契約書の作成

公証役場にて公正証書契約書の作成

⑥登記

公証人が東京法務局に契約の内容を通知して登記される。

⑦家庭裁判所へ任意後見監督人の選任申立て

⑥と⑦の間は通常の生活から判断能力の低下まで契約内容に定めた事項(見守り契約等)を行う。

判断能力が低下したら家庭裁判所へ任意後見監督人の選任申立てを行い任意後見開始の手続きを始める。

※申し立てができる人:本人、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者

⑧審理

家庭裁判所の調査官が本人と面接して本人の状況や以降の確認、関係者と面接し事情を確認する。

必要に応じて医師の診断もある。

⑨審判

審判の結果が本人、申立人、任意後見人、任意後見監督人へ告知される。

⑩確定

家庭裁判所から法務局へ審判の内容が通知され登記される。

⑪任意後見開始

登記が完了すると裁判所より任意後見人、任意後見監督人に通知書が送付されるので任意後見人は後見監督人の指示に従い財産目録等を調整する。

まとめ

任意後見に関してはまだ判断能力があるうちに準備できるという点で、依頼者の希望に沿ったサポートの第一歩だと思います。

ただしこれだけで十分ではなく、生前事務委任や死後事務委任といった契約を合わせることでより希望に沿える形になると思いました。

生前事務委任や死後事務委任についても今後書いていきたいと思います。